離婚時に一括で貰った養育費を使い切った…追加請求はできる?

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離婚する際に子どもがいれば多くのケースでは養育費を払うことになろうかと思います。

場合によっては、今後一切の連絡を取りたくないといった理由から一括払いするケースもありますが、一括で貰った養育費を使い切ってしまった場合には追加で養育費を請求することが出来るのでしょうか?

判例と併せて解説したいと思います。

 

■養育費を追加(増額)請求できることがある

まず前提として、協議、調停や審判の形で養育費を一旦取り決めた場合であっても、家庭裁判所は、必要があると認めるときにはその取り決めを変更することができるとされています(民法766条3項、880条)。

仮に相手方が追加請求に応じなくても、家庭裁判所に取り決めを変更してもらえるよう調停・審判を申し立てることができるわけです。

一般論としていえば、養育費の額を取り決めた際に前提とされた事情に変更が発生し、養育費の増額が必要となったという場合には、増額請求をすることができます。

もっとも、仮に事情の変更があったとしても、その事情変更が取り決め時に予見可能であった場合には増額は認められないとされています。

いいかえれば、取り決め時に予見不可能であった事情変更が生じた場合に増額が認められることになります。ここでいう予見不可能な事情変更の典型例は、収入の減少、教育費の増額、子どもの病気といったものがあげられます。

 

■ 養育費を一括で受け取っていても、追加請求できることも

一括で支払った側の心情からすれば、“これを支払えば全て終わり”という気持ちになるのはある意味当然のことでしょう。

しかし、受け取った側(子ども)からいえば、“いくら一括で受け取っていても、状況が変わり現に足りなくなってしまったのだから支払ってほしい”という状況になることもありえます。

結論からいえば、仮に養育費を一括で受け取った場合であっても、追加で養育費を請求することが認められる可能性はあります。

 

■ 追加請求を認めた審判例

一括で受け取った後の追加請求を認めた審判例があります(東京家庭裁判所平成9年10月3日審判)。

申立人と相手方が離婚する際に、子が成年に達するまでの養育費として1,000万円を申立人が一括で受領したのですが、その子が私立の小中学校に通学したため、中学卒業までにその1,000万円を使い切ってしまったというケースです。

さらに言えば、申立人は、1,000万円の養育費のほかに、離婚に伴う財産分与・慰謝料として3,000万円を受け取っていたのですが、その3,000万円を父親の事業につぎ込んで使い切っていました。

裁判所も、「『成年に達する迄の養育費として』1,000万円を受領したのに、事件本人の中学卒業までに使い切ってしまったことについては、その支出につき計画性や工夫が足りないと批判されてもやむを得ない面がある」と申立人を批判しています。

しかしそれでも、相手方も私立だけの教育コースを歩んでおり、子どもにも同程度の教育を受けさせることが不相当とはいえないということも理由にあげて、養育費の追加請求を認めています。

親が子どもに対する扶養義務を果たすために負担する費用が養育費ですが、子どもがどの程度の扶養を必要とするのか、あるいは親がどの程度の扶養を負担できるのかといった事情は、養育費の金額を取り決めた後に変動することもよくあります。

しかしその変動が取り決め時に予見可能であったのなら、そのことも踏まえて取り決めをしているはずですから、取り決めた額から増額(減額も)する必要はないと裁判所に判断されることになってしまいます。

とはいえ、予見可能か不可能かというのは簡単に区別できるものでもありません。養育費を一括で支払ってもらった場合でも、何らかの事情変更があるならば、あきらめずに追加で支払うように調停・審判を申し立ててみる価値は十分にあります。

 

*著者:弁護士 近藤美香(秋葉原よすが法律事務所。家事事件を専門的に取り扱い、500件以上の家事事件を取り扱った経験を持つ。JADP認定の夫婦カウンセラーの資格を保持している。)

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近藤 美香 こんどう みか 弁護士

秋葉原よすが法律事務所

東京都台東区浅草橋5-2-3鈴和ビル4-A

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