企業による「退職勧奨」と「退職強要」その境目はどこにある?

ワンセブン / PIXTA(ピクスタ)解雇サラリーマン

●解雇は原則自由?

解雇とは、使用者が労働者との間で締結した労働契約を一方的に解約することです。

民法627条1項は、「当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から2週間を経過することによって終了する。」と定めていますので、民法では「解雇の自由原則」が採られていることになります。

しかしながら、労働者の立場からすると、解雇は生活の糧を奪われることになり、労働者及びその家族に深刻な影響を与えることになるため、解雇を全く自由に認めることは妥当ではないと解されるようになり、最高裁判所が昭和50年4月に「(解雇権の行使が)客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当として是認することができない場合には、権利の濫用として無効となる。」と判断したことで、判例上、「解雇権濫用の法理」が確立され、これが現在の労働契約法16条として明文化されるに至っているところです。

すなわち、民法の原則が、特別法によって修正されているのです。

 

●退職勧奨と退職強要

ところで、解雇に至らない段階で、使用者が労働者に対し自発的な退職を促すことがあります。

いわゆる退職勧奨ですが、これは、労働者に対する「合意退職の申入れ又はその誘因」に過ぎず、労働者としては、これに対し、何らの拘束もされずに自由に意思決定をできるものです。応じてもよいし、応じなくてもよいのです。

労働者が自由な意思決定をなし得ることを前提とするこのような退職勧奨の性質からしますと、この前提を欠いた退職勧奨は、もはや退職勧奨とはいえず、退職を強要するものとして、違法性を帯びてきます。

 

●退職強要といえるか否かの判断基準はどこ?

退職勧奨として適法なのか、もはや退職強要として違法なのかの判断基準は、労働者に対する説得の回数、手段、方法、態様等が社会通念上相当かどうかという観点から判断されることになります。

労働者が退職を拒否しているのに、何度も呼び出し、長時間も説得を続けたり、退職しなければ解雇になるなどといった強迫的な言辞が加わってきますと、退職強要と評価される可能性が高くなってくるでしょう。

 

*著者:弁護士 田沢 剛(新横浜アーバン・クリエイト法律事務所。8年間の裁判官勤務を経たのち、弁護士へ転身。「司法のチカラを皆様のチカラに」をモットーに、身近に感じてもらえる事務所を目指している。)

田沢 剛 たざわたけし 弁護士

新横浜アーバン・クリエイト法律事務所

横浜市港北区新横浜3-19-11-803号(加瀬ビル88)

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