犯人逮捕時に「実名報道」される時とされない時の差はどこにある?

●報道機関の使命

新聞・雑誌などのマスコミには、報道の自由があります。

民主主義国家においては、よりよい社会を形成するための基盤として、様々な情報が流通し、これに対する国民のアクセスも自由であることが前提となります。

報道機関は、そのような国民の知る権利に奉仕するという重要な使命を負っています。

 

●少年の場合は匿名

犯罪報道は、基本的には捜査機関に対する取材や警察発表を前提に行われるものですが、容疑者の実名報道については、少年と成人とでは扱いが異なり、少年の場合は匿名が原則です。

少年法61条は、「家庭裁判所の審判に付された少年又は少年のとき犯した罪により公訴を提起された者については、氏名、年齢、職業、住居、容ぼう等によりその者が当該事件の本人であることを推知することができるような記事又は写真を新聞紙その他の出版物に掲載してはならない。」と規定して、推知報道を禁止しています。

これは、いまだ成長途上にある少年に対しては、仮に罪を犯したとしても、その健全な育成を援助することが社会の責任であり、そのためには、実名報道など少年のプライバシー等を侵害するものは、その健全育成を阻害しかねないことから、そのような報道を規制する必要があるとの趣旨で設けられたものです。

この規定の存在ゆえに、未成年者の実名や容貌の報道が控えられているところです。

 

●成人は実名報道が原則だが・・・

一方で、成人の場合は、法律上の明示的な規制がないため、実名報道が原則になっているようです。ただ、マスコミ各社において自主的なルールを設けており、場合によっては匿名で報道することもあります。

一般的には、任意捜査か否か、事件の重大性等から社会的関心の強い事件であるか否か、公的な人物(政治家や大企業の幹部、芸能人など)による事件か否か、すでに十分な社会的制裁を受けているため、改めて実名報道することはその犯罪の性質に比して過度の制裁を加えることになりかねないか否かなどを考慮して決められているようです。

 

●無罪推定の原則との関係

犯罪の容疑者が逮捕されたとしても、刑事裁判で有罪が確定するまでは、「無罪推定の原則」が働きます。よって、逮捕された人物があたかも犯人であると決め付けたり、あるいは犯人であると国民に印象付けるような報道は行き過ぎです。

後に、無実であることが判明した場合には、もはや取り返しが付きません。

個人的には、成人であるからといって実名報道を原則にするのではなく、実名報道をすべき「社会的利益」があるか否かを慎重に検討した上、これが肯定されるものでなければ匿名とすることを原則とすべきと考えています。

 

*著者:弁護士 田沢 剛(新横浜アーバン・クリエイト法律事務所。8年間の裁判官勤務を経たのち、弁護士へ転身。「司法のチカラを皆様のチカラに」をモットーに、身近に感じてもらえる事務所を目指している。)

*そらとりく / PIXTA(ピクスタ)

田沢 剛 たざわたけし 弁護士

新横浜アーバン・クリエイト法律事務所

横浜市港北区新横浜3-19-11-803号(加瀬ビル88)

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