知らないと損する「敷金の返還」についての基礎知識

これから迎える春は、入学や就職、異動などで引越シーズンといえます。

それまで賃貸アパートやマンションで生活をしていた人(賃借人)にとっては、その部屋を借りる際に家主(賃貸人)に差し入れていた敷金も、家賃の数か月分にのぼるなど、金額としては少なくないことが多いため、それがきちんと戻ってくるかどうかは大きな関心事となります。

そして、やはり「敷金が戻ってこない」などのトラブルが多く発生するシーズンとなります。

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●敷金って何?

そもそも、敷金とは、「賃貸借契約上の賃借人の債務を担保する目的で、賃借人から賃貸人に交付される金銭で、賃貸借契約の終了の際に、賃料不払いや賃借物件を毀損した場合の損害賠償責任などの賃借人の債務があれば、それを控除して返還されるもの」です。

賃借人は、借りた部屋を原状にて返還する義務(原状回復義務)がありますので、家賃を滞納していなかったとしても、床や壁を故意又は過失によって毀損してしまったような場合には、それを自ら修繕して退去するか、修繕せずに退去した場合には、修繕費用を負担しなければならず、その分を敷金から控除されても文句は言えません。

しかしながら、ここでいうところの「原状回復」は、借りた当時の状態に戻すことではありません。

 

●普通に暮らした「損耗」に対して払う必要はない

部屋というものは、賃借人が普通に暮らした場合にも「損耗」は生じるものです(通常損耗)。賃借人は、そこを借りて暮らすことの対価として家賃の支払いをしているのですから、賃貸人は、通常損耗分を家賃によってすでに回収しているといえます。

そうすると、通常損耗分の修繕費用を敷金から控除してしまうことは本来できませんし、賃借人が本来負担するはずのない通常損耗分の修繕費用まで賃借人に負担させる契約条項は、「消費者の利益を一方的に害するもの」として、消費者契約法10条により無効となる可能性が高く、賃借人としては、仮にその分が敷金から控除されても、返せと請求できることになります。

 

●例外もあるので注意

但し、最高裁判例には、関西地方で慣習となっていた敷引特約(退去時に敷金の2割から8割ほどを控除して返還する旨の特約)について、「賃借人が敷引特約を明確に認識して契約締結に至った場合には、敷引金の額が賃料等の額に照らして高額に過ぎるなど、特段の事情がない限り、信義側に反して消費者の利益を一方的に害するものとはいえない」として、消費者契約法10条により無効とはならないと判断した事例がありますので、通常損耗分の修繕費用を賃借人に負担させる特約も、無効とはならない場合があります。

以上の点は、東京都都市整備局がインターネットで公開している「賃貸住宅トラブル防止ガイドライン」に詳しく説明されていますので、賃貸借契約の内容や退去時の敷金精算書をよくみて頂き、専門家に相談するなどして、損をしてしまうことがないようにして頂きたいところです。

 

*著者:弁護士 田沢 剛(新横浜アーバン・クリエイト法律事務所。8年間の裁判官勤務を経たのち、弁護士へ転身。「司法のチカラを皆様のチカラに」をモットーに、身近に感じてもらえる事務所を目指している。)

賃貸住宅トラブル防止ガイドライン

田沢 剛 たざわたけし 弁護士

新横浜アーバン・クリエイト法律事務所

横浜市港北区新横浜3-19-11-803号(加瀬ビル88)

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