「痩せなければクビ」モデル事務所から警告…太って解雇は合法?

*画像はイメージです:https://pixta.jp/

日本の女性モデルは、世界と比較すると「痩せすぎ」であるという指摘があります。これは日本人が「痩せていることが美しい」という価値観を持っているためだと思われます。

そのため、モデルたちは太らないよう食事制限などを行いますが、なかには行き過ぎて拒食症や摂食障害になることもあり、問題化しています。

 

■モデルや芸能人に「痩せなければクビ」と命令するケースも

美しいことをウリにするモデルや芸能人だけに、体型を維持するよう努力するのはあたりまえであるという考え方があります。

そのため、競争勝ち抜くために、体型の崩れが目立つモデルには、事務所から「痩せなければクビ」などと、実際に解雇する気があるのかは別にしても、発奮を促す意味でそのような言葉をかけることがあるようです。

また、TV番組などでも「○○キロ痩せなければMC降板」などと銘打ち、ダイエット企画が放送されることがあります。見ているほうは面白いでしょうが、言われたほうはたまったものではありません。

このような「痩せなければクビ」という命令は合法なのでしょうか。また実際に痩せることができなかったとして当該モデルを解雇した場合、違法性を問われないのでしょうか?

法律事務所あすかの冨本和男弁護士にお伺いしました。

 

■「痩せなければクビ」は違法?

「合法(解雇が有効)となる場合もあると考えます。まず、労働者の解雇について、一般論を確認いたしますと、

労働者が契約社員の場合、契約期間が定められており、その契約期間中は簡単に労働者を解雇できません。どうしても解雇したい場合には「やむを得ない事由」が必要です(民法628条・労働契約法17条1項)。

労働者が正社員の場合、契約期間の定めはありませんが、労働者を解雇する場合には、まず原則として30日前に予告するか、30日分以上の解雇予告手当を支払わなければないとされています(労働基準法20条1項)。

そして、解雇予告・解雇予告手当の条件を充たせば解雇が有効かというと、必ずしもそうではなく、解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とするとされています(労働契約法16条)。

つまり、労働者の解雇は簡単に認められるものではありません。

また、男女雇用機会均等法は性別を理由とする差別はもちろん身長・体重を理由とする差別も禁止しており、合理的な理由がある場合でなければ特別な取り扱いをしてはならないとしています(男女雇用機会均等法7条・同法施行規則2条1号)。

以上、一般論から言えば、そもそも労働者の解雇自体簡単には認められないし、さらに身長・体重を理由に差別的取扱いをするのも問題があることになります。

ただし、「やむを得ない事由」・「客観的合理的理由」・「解雇の社会通念上の相当性」が認められれば解雇は有効ですし、体重を理由とする差別的取り扱いについても「合理的な理由」があればこれも有効です。

モデルの場合、職業の性質上ルックスが条件とされるのは仕方のないことだと思いますので、例えば、事務所から適切な食事制限・運動を指示されたにも関わらず従わず、隠れて間食を続け、あるいは運動をさぼり、その結果ルックスを維持できなくなったような場合、「やむをえない事由」・「合理的な理由」があるとして解雇が有効となる場合もあるのではと考えます」(冨本弁護士)

モデルという職業の性質上、事務所からの指示を無視する形でルックスや体型維持を怠った場合は、解雇が有効となる場合も考えられるようです。

華やかなモデル業界も、厳しい世界なのですね。

 

*取材協力弁護士:冨本和男(法律事務所あすか。企業法務、債務整理、刑事弁護を主に扱っている。親身かつ熱意にあふれた刑事弁護活動がモットー。)

*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)

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*tomos / PIXTA(ピクスタ)

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