体調不良なのに「這ってでも出社しろ」と言われた…こんなのってアリ?

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日本の会社員は有給休暇を取る人が少ないといわれています。ある調査サイトによると、ヨーロッパ諸国では有給消化率がほぼ100%近いのに対し、日本は60%程度にとどまっているそう。

本来有給休暇取得は社員の権利で、会社が時季変更権を行使しない限り、いかなる理由でも認められるべきものなのですが、会社によっては企業側担当者が嫌な顔をしたり、「休むな!」と言われることもあるようです。

いわゆるブラック企業になってくると、やむをえない体調不良でも、「這ってでも出てこい!」などと怒鳴られることもあると聞きます。

このような行為は、違法ではないのでしょうか? ピープルズ法律事務所の森川文人弁護士に見解を伺いました。

 

■企業には労働者に対して安全配慮義務がある

「労働契約法第五条では“使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。”と規定されています。

体調不良であり休みたい旨を伝えているにも関わらず、這ってでも出ろという業務命令は、この安全配慮義務に違反する可能性があります。

程度によっては体調不良の立証は難しい場合もあると思いますが、診断書などではっきりしている場合、かつ、それ故休みたい旨メール等で伝え、それに対し“這ってでもでろ”と応答があった旨を立証できれば、損害賠償請求も可能と思われます」(森川弁護士)

企業は労働者に安全配慮義務を有しているため、体調不良の立証がなされている社員に対し「這ってでも出ろ!」と圧力をかけることはその義務に違反するため、違法行為になるようです。

 

■配慮し合える人間関係の構築を

このようなことが行なわれている現状についても、聞いてみました。

「たしかに、こういうことは多いでしょうね。単にさぼっているんじゃないかと疑いをかけられなどして、ですね。会社側(上司)としては、やはり、相手、つまり“体調不良”を訴える者の立場に立って配慮する、そういう人間関係が必要なのだと思います」(森川弁護士)

サービス業などではシフト制を敷く企業も多く、「体調が悪くても休めない」と考えている人も多いと聞きます。おそらくその感情は、「会社や他のメンバーに迷惑がかかる」という責任感から生まれたものでしょう。

もちろんそれも大事なのですが、一方で会社もそのような社員に対し、適切な休暇を取らせるよう配慮する義務があります。経営者のみなさん、その点をお忘れなきようお願いします。

 

*取材協力弁護士:森川文人ピープルズ法律事務所。弁護士歴25年。いわゆる街弁として幅広く業務を経験。離婚、遺産相続をはじめ、不動産、 慰謝料・損害賠償請求、近隣トラブル、借地借家、賃金、インターネット問題、知的財産権などを扱う。)

*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)

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