隣人がうるさい…分譲マンションは強制退去させられないの?

近隣トラブルには様々なものがありますが、その代表格がマンションなどでの生活音のダダ漏れ。

「夜にもかかわらず年中ドタドタと足を踏み鳴らす」「真夜中に大音量で音楽をかける」など、多種多様なケースを見聞します。

ご存知の通り「音がうるさい」ということを発端としたトラブルが殺人事件を引き起こしたこともあります。

賃貸マンションなら最悪引越しも考えられますが、分譲マンションの場合は、なかなかそうもいきません。

このようなとき、法律的に加害者を強制退去させることはできないのでしょうか? 和田金法律事務所の渡邊寛弁護士に見解を伺いました。

 

Q.分譲マンションに住む隣人の騒音が激しい場合、被害者側から強制退去させることはできる?

*画像はイメージです:https://pixta.jp/

A.生活騒音の場合は、退去を求めることまではできません。

「マンションの他の入居者の騒音被害が改善されない場合、損害賠償請求や差止請求が考えられます。

裁判では、騒音の態様や程度(音の種類、大きさ、時間帯、頻度、継続性など)、騒音防止の措置の有無や内容、マンションの遮音性能などの事情を総合的に考慮して、一般人を基準に、騒音が社会生活上の受忍限度を超えるものであるかどうかによって判断されます。

過去の裁判で慰謝料請求が認められたものとして、階上の住戸の子どもの騒音の事案で原告1人当たり30万円の慰謝料を認めた裁判例(東京地裁平成24年3月15日判決、東京地裁平成19年10月3日判決)、階上の住戸のフローリング床への変更による生活騒音の事案で原告1人当たり75万円の慰謝料を認めた裁判例(東京地裁八王子支部平成8年7月30日判決)があります。

差止請求の対象は、部屋の使用ではなく、騒音の発生ですが、損害賠償請求よりもハードルは高いです。

分譲マンションについては、建物区分所有法という法律があり、所有者の“共同の利益に反する行為”があったときは、管理組合が同法に基づいて使用禁止や競売を請求できることがあります。

もっとも、他の方法で効果が望めないときの請求であり、一般的な生活騒音の場合は“共同の利益に反する”とまでは言い難いため、まず認められないと考えられます。

騒音被害で競売請求が認められた裁判例もありますが(東京地裁平成17年9月13日判決)、昼夜を問わず騒音・振動・叫び声等を発生させるなどの著しい迷惑行為があった極端な事案です」(渡邊弁護士)

損害賠償を請求することはできますが、退去を求めることはほぼ不可能であるようです。筆者もマンションの騒音問題で悩んだ経験があるのですが、問題解消の糸口がなかなか見つからず、ノイローゼ気味になりました。

引越しというわけにもいかないという方は、弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。

 

*取材協力弁護士: 渡邊寛和田金法律事務所代表。2004年弁護士登録。東京築地を拠点に、M&A等の企業法務のほか、個人一般民事事件、刑事事件も扱う。)

*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)

【画像】イメージです

*kojikoji / PIXTA(ピクスタ)

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