事件の「被害者」の実名や個人情報を報道することにどのような意味があるのか

そらとりく / PIXTA(ピクスタ)報道テレビ

事件の「被害者」の実名や個人情報がよく報道されています。

しかし、これに対して批判的な意見を持つ人は少なくありません。被害を受けながら更にプライベートな実生活についてや、過去の話などを友人や知り合い根掘り葉掘り聞かれ、マスコミによって世界中に報じられてしまいます。

もちろん憲法により報道の自由が保障されており、国民の知る権利に奉仕するという役割があります。とは言っても、被害者のプライベートを暴くことに、どのような社会的なメリットがあるのでしょうか。

 

●最低限の情報は仕方がないが・・・

事件の真相を解明するためには、それぞれの当事者の背景などをする必要がありますので、その限度で個人情報が明るみにでるのは仕方のないことだと思います。

また、実名を出すことによって、その方を知る人たちからの情報収集ができるというメリットはあるのかも知れません。

刑事事件をやっていると、被害者の重複被害の場面によく遭遇します。被害者は、実際の被害の場面で既に被害者ですが、取り調べを受けて根掘り葉掘り聞かれ、否認されると法廷に引っ張り出され公に尋問を受け、更には報道に晒される……。

事件の真相解明と被害者の重複被害を天秤にかけた場合にどちらに重きを置くべきかは、とても難しい問題ですが、そこは被害者の意向を尊重するべきではないかと思います。

特に被害者の実名報道に関しましては、プライバシーの最たるものですし、どのような被害にあったのかについては、公表されない自由があるものと思います。特に破廉恥な事案だったりすれば尚更ですね。

とはいえ、ネット社会ですので、実名報道を隠したところで、興味本位で暴く輩が多いのも事実です。非常に悩ましい問題です。

 

*著者:弁護士 小野智彦(銀座ウィザード法律事務所。浜松市出身。エンターテイメント法、離婚、相続、交通事故、少年事件を得意とする。)

*そらとりく / PIXTA(ピクスタ)

小野智彦
小野 智彦 おのともひこ

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