悪気なしに子供が万引きしても、親は責任を負うの?

スーパーやコンビニなどで、親が目を離している隙に、幼い子供が商品を持ってきてお父さんやお母さんのカバンに入れてしまったり、悪気なくそのまま持ち出してしまうということは、起こりがちな出来事です。

このようなケースが店側に発覚した場合、親は責任を問われるのでしょうか。民事責任と刑事責任、2つの責任が考えられるので、それぞれについてお話します。

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■未成年者の責任能力と監督義務者の責任

民法第712条は「未成年者は、他人に損害を加えた場合において、自己の行為の責任を弁識するに足りる知能を備えていなかったときは、その行為について賠償の責任を負わない」と定めています。

注意しなければならないのは、未成年者全体が他人に損害を加えた場合、常に賠償責任を負わないとされているのではなく、未成年者のうち「自己の行為の責任を弁識する能力がない者」に限定して、賠償責任を負わないとされているということです。

この「自己の行為の責任を弁識する能力」(責任能力)の有無の基準となる年齢は、法律で明確に定められていません。ただ、今までに出た判例では、11歳前後を基準として、事案の内容に応じて、責任能力の有無が決せられているようです。

子どもに責任能力がない場合には、民法714条で、「その責任無能力者を監督する法定の義務を負う者」あるいは「監督義務者に代わって責任無能力者を監督する者」が、損害賠償責任を負うと定められています。「監督義務者」とは、子どもの親権者や(学校にいる間に起こした事故などの場合には)学校長などが含まれます。「監督義務者に代わって責任無能力者を監督する者」には(学校事故などの場合)担任の先生が該当すると考えられています。

つまり、幼くて責任能力がない子どもが商品を持ち出したりしたような場合には、親が監督義務者として、店側に対して損害賠償責任を負うことになります。

なお、監督義務者が義務を怠らなかったことや義務を怠らなくても損害が発生したであろうことを証明したときには責任を負わなくてよいとされていますが、実際には責任の回避は非常に困難であるといわれています。

 

■刑事責任はどうなるか

商品を会計しないで持ち出す行為は、窃盗罪(刑法第235条)に該当します。しかし、子どもが悪気なく商品を持ち出すケースでは、故意が欠けるため、そもそも罪に問うことはできません。

「盗む」つもりで商品を持ち出したケースでも、刑法40条は、14歳未満の者の行為は罰しないと定めているので、罪に問われることはありません(但し、触法少年として例外的に少年審判に付されて少年法に定められた処分が下される場合があります)。

子どもの親に対しては、例えば親が指図して商品を持ち出させたような例外的なケースでない限り、刑事責任が課されることはありません。

 

*著者:弁護士 寺林智栄(ともえ法律事務所。法テラス、琥珀法律事務所を経て、2014年10月22日、ともえ法律事務所を開業。安心できる日常生活を守るお手伝いをすべく、頑張ります。)

寺林 智栄 てらばやしともえ

ともえ法律事務所

東京都中央区日本橋箱崎町32-3 秀和日本橋箱崎レジデンス709

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