連続通り魔事件で聴取「任意同行」ってそもそも何?

先日、千葉県柏市の路上で男性4人が相次いで襲われた連続通り魔事件について、警察は、ある男性を事件に関与した疑いがあるとのことで任意同行して取り調べ、強盗殺人の疑いで逮捕しました。

今回は逮捕前に警察が行った「任意同行」がどのようなものか、任意同行が法律上許されるのかどうかについて説明したいと思います。

任意同行

「任意同行」とは、本人の同意を得て警察署等まで同行させることです。

「任意同行」には、刑事訴訟法上の任意同行と警察官職務執行法上の任意同行の2種類があります。

■1:刑事訴訟法上の任意同行について

刑事訴訟法198条1項本文は、「検察官、検察事務官または司法警察職員は、犯罪の捜査をするについて必要があるときは、被疑者の出頭を求め、これを取り調べることができる。」と規定しています。

この「被疑者の出頭を求め」る方法の一つが、捜査官が被疑者の居宅等に行き、被疑者の同意を得て警察署等まで同行させる「刑事訴訟法上の任意同行」です。要するに、被疑者を取り調べるための任意同行です。

今回連続通り魔事件で行われた任意同行は、この刑事訴訟法上の任意同行になります。

刑事訴訟法上の任意同行については、刑事訴訟法198条1項但書が「被疑者は、逮捕または勾留されている場合を除いては、出頭を拒み、または出頭後、何時でも退去することができる。」と定めているため、被疑者は、任意同行を拒むことができます。

被疑者が任意同行を拒んだ場合、捜査機関は、逮捕状を得て逮捕し、その上で取り調べをすることになります。

■2:警察官職務執行法上の任意同行について

警察官職務執行法は、2条1項で怪しい人に対する警察官の職務質問を認め、2条2項で「その場で前項の質問をすることが本人に対して不利であり、または交通の妨害になると認められる場合においては、質問をするため、その者に付近の警察署、派出所または駐在所に同行することを求めることができる。」と規定しています。

この同行が「警察官職務執行法上の任意同行」です。要するに、怪しい人に職務質問するための任意同行です。

職務質問とは、警察官が挙動不審者等に対し犯罪の予防等を目的として行う質問です。

警察官職務執行法上の任意同行は、例えば、路上駐車している人が怪しいので職務質問したいが、道が狭く、このまま職務質問を行ったのでは交通の妨げになるといった場合に行われます。

警察官職務執行法上の任意同行も、「任意」、すなわち相手方の意思に任せた処分であるため、相手方が拒否した場合できませんし、逮捕のような強制力を伴う方法をとることもできません。

警察官は、警察官職務執行法上の任意同行を拒否された場合、相手方を説得したり逮捕状や捜索差押令状をとることになるのでしょうが、それまでの間、相手方を引き止めたり追跡する等の合理的な実力行使をすることができるとされています。

警察官の職務質問に抵抗して、公務執行妨害の罪で逮捕されたケースもありますので、警察官の職務質問に対しては慎重に対処する必要があります。

冨本和男
冨本 和男 とみもとかずお

法律事務所あすか

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